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『薬物について考える〜覚醒剤・麻薬と精神薬〜』

覚醒剤やヘロインなどの麻薬には強い依存性があり、やめたくてもやめられないといった話をみなさんも聞いたことがあると思います。

「ダメ、ゼッタイ!」みたいなキャッチコピーでこういった薬物に手を染めないように注意喚起をしているポスターなどもよく見かけます。

当たり前ですが、覚醒剤や麻薬は身体によくありません。

これらの薬物は脳を破壊し、精神も崩壊させ、まさに身も心もボロボロにしてしまいます。

使ったらダメです。

健康的にも法的にもです。

しかし、歴史を振り返ってみると、これらの薬物が合法的に使われていた時代がありました。

覚醒剤は使用した者のやる気と勇気をみなぎらせる、危険に挑む際の恐怖心を払拭する、集中力を鋭くする、空腹感や痛みの感受性を鈍化させる、睡眠の必要性を抑えることから、軍隊にとって非常に望ましいものだとされ、多くの国で多くの兵士に使用されました。

ちなみに日本では1943〜1950年まで、ヒロポンの名称で覚醒剤が普通に市販されていました。

しかし、多くの中毒者や体調不良者が続出したことで、販売禁止となったのですが、当時のヒロポンの添付文書には、

「副作用はほぼないが大量に使用した場合にのみ起こりうる、使用者が敏感な場合に限られていて、症状は軽度である。著明な習慣性はなく、中断しても離脱症状は表れない」

て書いてあったそうです。

覚醒剤の起源は諸説あるそうですが、日本人とドイツ人が麻黄(マオウ)という植物から覚醒剤の成分を抽出・精製し、武田薬品工業が戦前に商品化したそうです。

覚醒剤以外の麻薬も最初は製薬会社によって作られました。

ヘロインはバイエル社が1898年に開発し、LSDはノバルティス社の研究員が合成し、MDMAはメルク社が合成し、コカインは三共製薬によって1920年代に精製されて闇市場に売りさばかれました。

もちろん、現代では覚醒剤やヘロイン、MDMA、LSD、コカインなどの麻薬を使うことは違法ですが、これらの薬理学的機序(メカニズム)と類似する薬物があり、統合失調症、躁うつ病、不眠症、自律神経失調症など、いわゆる精神疾患において数多く使用されています。

精神薬と覚醒剤・麻薬の薬理学的機序(メカニズム)

【精神薬】

①抗うつ薬はセロトニンの取り込みを阻害する=セロトニンを増やす

②抗精神病薬はドーパミンの活動を抑える。セロトニンにも作用する。

③抗パーキンソン病薬はドーパミンを増やしたり刺激したりする。

④抗不安薬はベンゾ結合部に作用し、ノルアドレナリンやドーパミンを抑制する。

【麻薬・覚醒剤】

①MDMAはセロトニンの再取り込みを阻害する。細胞内セロトニンを高める。

②LSDは脳内のセロトニンシステムに働きかける。

③覚醒剤はドーパミンを放出し取り込みを阻害する。

④コカインはセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリントランスポーターを阻害する。

このように精神病薬と覚醒剤、麻薬の薬理学的機序を見比べてみても、両者の共通性が非常に高いことがよくわかります。

両者とも脳に直接的に作用して脳内のセロトニンやドーパミン、神経伝達物質などを増やしたり減らしたりすることで、薬理作用を得ています。

うつ病とモノアミン仮説

モノアミンとは、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質の総称です。

これらの神経伝達物質が脳内で減少したり増えたりすることで、うつ病や統合失調症などが起こるという説を「モノアミン仮説」と言うのですが、そもそも脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの量なんて測ることはできません。

現在では多くの研究者らによってモノアミン仮説は誤りであることが指摘されています。

しかし、いまだにこの理屈に基づいて多くの抗うつ薬が多くの人に使われています。

覚醒剤や麻薬は使ってはいけない

覚醒剤や麻薬には依存性があります。

依存性があるということは、やめたくてもやめられないということであり、やめようとすると動悸や不安感の増強、身体の痛みや不眠、その他さまざまな問題が禁断症状として現れますが、身体のためには覚醒剤や麻薬は、当たり前ですがやめなければいけません。

内海先生はよく「飲むのも地獄、飲まぬも地獄」と表現されるように、本人にとって禁断症状は耐え難いほどつらいものかもしれません。

しかし、それがつらいからと言って、再び覚醒剤や麻薬を使うという行為は自らで脳も身体も精神も破壊していることに他なりません。

また、「禁断症状は(治るうえで)絶対に出なければいけない」とも内海先生はおっしゃいます。

逆説的に言えば禁断症状が出るということは、身体が治そうとしている証拠です。

禁断症状はつらいものであっても、過度に恐れることはせず、時には必要に応じて代替療法などをうまく活用しながら、心身の健康を再び取り戻すという強い意志のもと、覚醒剤や麻薬からの早期脱却を目指していっていただければと切に思います。

山梨県甲府市の整骨・整体 くぼた整骨院

参考文献
・精神科は今日もやりたい放題 内海聡 著 2012年
・心の病に薬はいらない! 内海聡 著 2013年
・断薬のススメ 内海聡 著 2015年