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『膝がポキッとなる/半腱様筋腱の弾発症状と対処法』

ストレッチの翌日、膝がおかしくなった

Iさん、50代女性。

1か月前にストレッチを行った翌日、右膝が痛むようになってしまい、また膝の曲げ伸ばしをすると何かが「ポキッ」となる現象が起きるようになってしまいました。

膝の痛み自体は日に日に落ち着いてきたものの、膝のポキ感がなかなか改善せず来院されました。

歩いていても不意にポキッとなったり、椅子から立ち上がる時などもカクッとなったりするそうで、非常に気持ちが悪いとのことでした。

膝がポキッとなるとか、カクッとなるなど、表現は人によってさまざまですが、そのような表現をする人の中で、半月板を損傷しているケースがあるため、さらに詳しくお話を聞きながら触診や膝の曲げ伸ばしをしていただきました。

最初、仰向けで膝の曲げ伸ばしをしてもらいながら触診してみると、たしかに僕にも何かがポキッとなっているのが触知できました。

この感じからすると、どうやら膝の関節内ではなく、関節外で弾発現象が起きていることがわかり、幸い半月板損傷ではなさそうでしたが、

「うーん🤔何が引っかかっているんだろうなー」という感じで考えていると、

「うつぶせで膝の曲げ伸ばしすると他の人が見てもカクッていうのがわかるらしいです」とIさん。

さっそくIさんにうつぶせになってもらい、膝の曲げ伸ばしをしていただくと、なるほどたしかに膝裏の内側の部分で弾発現象がしっかり確認できました。

股関節で起こる弾発股と膝関節で起こる弾発膝

筋肉は骨から骨に付着する際、腱という繊維性の結合組織になって付着しています。

原因はさまざま考えられると思いますが、なんらかの影響によって筋肉自体が固くなってしまう=筋肉自体が収縮して縮こまっている状態になってしまうと、筋肉の長さは短くなります。

すると、イメージで言うと本来の走行ルートから筋肉や腱が逸脱するような力がはたらくことで、今回のケースのように腱の走行に無理がかかり、腱が骨にこすれたり、骨に引っかかったりする、腱の「弾発現象」が起きてしまうことがあります。

弾発現象を認める比較的ポピュラーな病態に、股関節の「弾発股」があります。

「弾発股」とは、内側型と外側型があるのですが、内側型は腸腰筋腱が股関節の内側にある小転子という部分に引っかかったりこすれることで弾発現象が起こり、外側型は股関節の外側にある大転子という部分に、腸頸靭帯がひっかかる、あるいはこすれることで弾発現象が引き起こされます。

今回のIさんの症例は、まさに弾発股と同様の機序で起きている弾発膝現象と思われます。

そして、Iさんの弾発膝現象の原因は、『ふとももの裏側の筋肉=ハムストリングスの「半腱様筋」と「半膜様筋」の緊張によって半腱半膜様筋腱が大腿骨の内側顆からズレるため』ということでほぼ間違いなさそうです。

内側ハムストリングスとも言われる「半腱半膜様筋」は骨盤の坐骨結節から起こり、ふともも裏の内側を走行してすねの骨の前側からやや内側に付着する筋肉です。

Iさんいわく、ストレッチした翌日に膝がおかしくなったので、自分で治そうと思い、さらにストレッチをしてしまったそうです。

筋肉には筋紡錘や腱紡錘という、筋肉の伸び縮みや張力を感知する、いわばセンサーがあるのですが、強度の高いストレッチなどで過度に筋肉に負荷がかかると、このセンサーがはたらき、「筋肉が切れたら困る」ので筋肉をかえって固めてしまうことがあるのです。

Iさん自身も普段やらないストレッチを入念に行ったという心当たりがあるため、おそらくストレッチをがんばりすぎてセンサーがはたらき、半腱半膜様筋をカチコチに固めてしまったのだと思います。

それらの筋肉を触診してみると、やはり筋緊張が強く、さらにもも裏が全体的に固く癒着しているような感じなので、癒着を剥がすように一つ一つの筋肉を独立させるようにリリースしたあと、Iさんに膝の曲げ伸ばしなど動きの確認をしてもらったところ、膝の弾発現象はほぼ消失し、まだ完全ではないのでセルフケアの方法をお教えして施術終了しました。

今回のように、症状が現れている箇所と原因となっている箇所が違うということは非常に多いです。

また、日常生活の中で何気ない動作であったり生活習慣であったりが知らず知らずのうちに痛みや不調を引き起こす原因になることもあります。

お身体の痛みや不調などでお困りの方はお気軽にご相談くださいませ。

参考文献
・肉単(ニクタン)〜語源から覚える解剖学英単語集〜 エヌ・ティー・エス 2004年
・プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版 医学書院 2014年

山梨県甲府市の整骨・整体 くぼた整骨院