みなさん「アダルトチルドレン」という言葉はご存知でしょうか?
アダルトチルドレンという言葉は、もともとはアルコホリック(アルコール依存症)の治療現場から生まれました。
アル中の親のもとで育った、静かで控えめな人々の「自己破壊的な他人への献身」に注目して、アダルトチルドレンという言葉が生まれましたが、次第にアル中や虐待をする親のもとで育ち、大人になった人たちという限定された解釈から、親から明らかな虐待や暴力を受けていなくても、機能不全家族のもとで育ち、親との関係で子どもの頃に何らかのトラウマを負ったと考えられる人が、最近のアダルトチルドレンの定義となっています。
機能不全家族とアダルトチルドレン
本来、子どもにとって家庭とは心身ともに休まる「安全な基地」であり、父や母(家族)は無条件に甘えることができ、愛してもらえ、わがままを聞いてもらえる存在です。
しかし、前述したように父母にアル中やギャンブル依存症、病気があったり、あるいは暴力やネグレクトなどの虐待があったりすれば、子どもは家庭が安全な基地ではなくなります。
また、それだけではなく、家庭内不和によりいつも家族のなかでいさかいやケンカが起きている、あるいは父母の仲が悪く、一切口を聞かないといったいわゆる家庭内別居のような状態に陥っているなど、日々これらのことを目の当たりにしながら生活を続ける子どもは、明らかな虐待や暴力を受けていなくても、自己の形成に大きな影響を受けます。
子どもが心身ともに健やかに成長するためには、子どもは父母から守られている、愛されているという実感と、安心して穏やかに過ごすことができる家庭という居場所が必要不可欠です。
しかし、上記のような機能不全家庭で育った子どもは人の目を気にする人間になったり、承認欲求を満たそうとして特殊な行動パターンをとるようになります。
アダルトチルドレン分類
アダルトチルドレン研究者の一人、クラウディア・ブラックは以下のようにアダルトチルドレンの行動パターンを分類しました。
機能不全家族のなかで、子どもたちは次のような心理的役割を演じるようになると言われています。
ヒーロー
何かが秀でている子どもがいると、さらなる活躍を期待して熱中し、子どもの方もいっそう頑張ることになり、ますます一芸に秀でることになる。漫画「巨人の星」の星飛雄馬のような子どもである。しかし本当の奥の心ではそこまでして頑張りたいとは思っていない。
スケープゴート
ヒーローの裏側に当たるのがこのタイプの子どもである。一家の負を全部背負うような子どもであり、この子さえいなければすべてうまく収まるという幻想を、家族全員に抱かせることで、家族の真の崩壊を防いでいるような子どもである。無意識のうちに家族の批判を集めるように行動する癖があり、だから背負うという言葉を使い、生贄という言葉を使う。病気をするといえばこの子、非行をするといえばこの子、問題を起こすのはいつもこの子という役割の子どもだが、もちろん本当の奥の心では生贄などにはなりたくはない。
ロストワン
「いない子」としての役割をする子ども。いつも静かで文字通り「忘れ去られた子」としてふるまう。家族がなにか一緒にやろうとしても最初はいるがいつのまにかいなくなっている。家族内の人間関係を離れ、自分が傷つくことを逃れようとしている。それが大人になると「いないという居方」にも磨きがかかってきて、いないこと、自分が孤独であること、人に感情移入しないことは普通であり、必然であると主張するようになる。斜に構えているのに平然としたフリを装うのがロストワンのポイントで、もちろん仲間や友人が欲しいのだが、安いプライドのためにそれを出すことはできない。
プラケーター
慰め役の子ども。慰める相手は大半が母親であり、父母の仲が悪く男尊女卑の家系が多く、父が母を責めている風景を覚えていたり、記憶に封じていたりする。いつも暗い顔をしてため息をついている母親を慰める。父母が逆転することも当然ありうるし、嫌いなはずなのに好きであると感情移入してしまっていることも多い。優しく、感受性が豊かなことが多いのだが、それもまた表面的であり、本当は自分が慰められたり、親に褒められたいのである。
ピエロ(クラン)
道化役の子ども。親たちの争いが始まり、家族間に緊張感が走り始めると、突然とんちんかんな質問をし始めたり、踊ったり歌ったりし始める子どもである。子どもなりの優しさゆえから場を慰めようとするが、毒親のレベルだとその行動の意味を解釈できず、頭が悪いことかペット的な扱いを受けている。ピエロもまた代表的なスケープゴートの一種であるとも言える。心の中はさみしさにあふれており、いつも家族が仲良くなってほしいと願っている。
イネイブラー
支え役・世話役の子ども。家族間の他の人の世話を焼いてクルクル動き回っている。父母の不和などで子どもの世話がしっかりできず、自分が代わりにやってあげねばならないという感覚を身につけた結果である。一般的には母親に代わって幼い弟や妹の面倒を見たり、父親代わりをしたりする。長女が女ではなく長男のような役割を自らに課している場合も、イネイブラーととらえることが多い。依存的な親との間に情緒的近親相姦が生まれる場合もある。
リトルナース
イネイブラーやプラケーターが家族を支えたり慰めたりするのに対して、リトルナースは家族以外、いわゆる血縁関係以外の他人に対しても、自分のことのように一生懸命解決しようとする。しかしこれは真の意味で他人の解決をしたいと願っているわけではなく、自分自身もそれに気づいていないことが多いため、問題の解決に至らず共依存関係に陥ることが多い。これは幼少期に満たされなかった承認欲求や、ほめてもらいたいという欲求を無意識に引きずっていることが多い。自分のつらい経験を生かして、セラピストやカウンセラーになりたいという人は多いが、そのような人が問題を本質的に解決できることはありえない。専門家を育成教育する時の基本であるが、最近はそのことも教えなくなってしまった。
ロンリー
直訳すると一人ぼっちであり、自分の殻に閉じこもり他者をまったく寄せ付けないようなタイプである。ロストワンに似ているようだが、ロンリーは現実的にも一人でいる時間が圧倒的に長く、ロストワンは集団の中にある程度いるのだが、自分の姿を消しているようなイメージであろうか。当然ながら何重にも心の仮面をかぶり、周りからは非常にめんどくさい人間だと思われている。
プリンス
王子といってもあまりよい意味ではない。周囲の期待に応えようとして自分をなくす、八方美人で流されやすい人である。ヒーローに若干近いがヒーローは実世界でもそれなりに活躍するのに対して、プリンスは陰で期待に応えようとするので、裏方だったり頼まれたら断れないようなことが多い。
「心の絶対法則(内海聡 著 2020年)」より
人はアダルトチルドレン像を無意識に体現してしまう
人の精神パターンは父母や家族関係、家庭環境によって0~5歳くらいまででほぼ形成されます。
そして、人はものごとを決定する時はいつも、幼少期に形成されたアダルトチルドレン像を無意識的に踏襲してしまいます。
しかし、アダルトチルドレンとは機能不全家族の中で生きていくためにやむをえず被ってきた「いい子ちゃん仮面」でしかなく、アダルトチルドレンとしてのふるまいは子どもにとって自分自身で認識していない無自覚的な演技であり、本当にそうしたいわけではありません。
したがって自分自身の根源的欲求は満たされることはなく、親から愛されたい、癒されたい、かまってほしい、認められたいといった満たされない感情を埋めるために、人の役に立ち、感謝されることで自分がいいことをしている、必要な人間であると思うことによって、そして他人の欲求を満たすことによって自らの承認欲求を満たすようになり、深層心理では本当はやりたくないことをいつもやっているという行動パターンが繰り返されます。
人は人生のあらゆる場面において、さまざまなことを決定し、行動を起こします。
すべては自分の意思で決めていると考えますが、実は幼少期に演じてきた仮面像=囚われたアダルトチルドレン像によってなされているかもしれず、繰り返しになりますが本当の心ではそうしたいと思ってやっているわけではないため、いつもものごとがうまくいかない、失敗してしまう、生きづらさを感じる、病気になるなど、さまざまな問題が生じる要因となります。
あなたはこれまでどんな仕事をやってきて、今はどんな仕事をしていますか?
あなたはこれまでどんな人と付き合ってきて、今はどんな配偶者を選んだのですか?
あなたの行動はすべて、幼少期に形成されたアダルトチルドレン像が影響しているかもしれません。
あなたは子どもの時にどのような親に、どのように育てられてきましたか?
そして、あなたはあなたの中にどんなアダルトチルドレン像を持っていますか?
山梨県甲府市の整骨・整体 くぼた整骨院
参考文献
・心の絶対法則 内海聡 著 2020年